せっつ気まぐれ鉄話

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寝過ごし厳禁の激ヤバ終着駅「南栗橋駅」は何故乗り換え駅なのか

南栗橋駅」という駅があります。東武鉄道日光線の駅であり、南北を直通する特急を除く全ての列車の終着駅であり、北側から来た列車と南側から来た列車同士で乗り換えをする必要があります。

「寝過ごしたらヤバい駅」としてYouTubeどころかテレビでも度々取り上げられる駅であり名前を知ってる人はまあまあいると思います。この駅より南側は地下鉄半蔵門線を通して遠くは東急田園都市線中央林間駅まで直通しており、この直通系統の北側の終着駅のひとつがここ南栗橋駅というわけです。
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緑(田園都市線)~ピンク(半蔵門線)~水色(東武スカイツリーライン)が直通系統。JR線は灰色、東武線の直通系統でないのは黄色

図が入ってる方が分かりやすいと思ったので入れました。見ての通り直通系統は渋谷を経由しています。押上から南栗橋まで結構な距離がありますので寝過ごしてもどこかで気付きそうなものですが、なんだかんだで寝過ごす人が後を絶たないものです。

 

この駅が寝過ごしたらヤバい理由はその周辺の何もなさに尽きます。駅周辺ならまずあるようなコンビニすらこの駅の周辺には無く、宅配ピザ屋と学習塾か何かが西口ロータリーにある程度でしかありません。コンビニすらないのにホテルやネカフェなんて存在しないのは言うまでもないでしょう。西口をちょっと歩けばイオンスタイル南栗橋等スーパーがありますが、どのみち夜はやってません。

では何故こんな駅が終着駅なのかと言うと、第一には「車庫があるから」という理由が挙がります。南栗橋車両管区は東武鉄道で最も大きな車両基地であり、車両の検査等も請け負う車両基地でもあります。そして伊勢崎線系統で唯一10両貫通編成がそのまま留置できる車庫でもあり、直通系統の車両は全てこの車庫に置かれます。南栗橋行の列車はこの車庫への入庫を兼ねている場合が割とよくあります。ちょうどこの辺りから北側が乗客が減る辺りなので、この駅で系統を分離し特急以外の全列車の折り返し駅兼乗り換え駅としたのです。

 

と、ここでこの駅が折り返し駅に設定された理由は説明できました。まあマニアなら誰でも知ってる話ですが、ここで話を止めずもう少し深掘りして「何故ここで直通を分断したのか」「何故この駅に車庫ができたのか」というところも考えてみましょう。ここからは主の考察も含まれますのでご了承ください。

 

・何故車庫を南栗橋に造ったのか

車庫や工場は北春日部、杉戸(東武動物公園)、西新井等ありましたが、いずれも「対応する編成が短い」という問題がありました。北春日部は8両ですし、最も候補に挙がりやすそうな杉戸は6両までしか対応してなかったという記録があります。ここを拡大する案もなくはなかったでしょうが、用地買収などの問題を抱えていた可能性はあり得ます。それに杉戸や西新井の工場は古くからの工場ですから設備もそれなりに古かったはずで、一方電車の修繕を一時的にでも止めるわけにはいかなかったので工場を修繕するより新規で工場を造った方が移行がスムーズだったのは容易に想像できます。

栗橋周辺は前々からターミナルやってた駅なので、車庫の用地どころか栗橋駅のホーム拡大すら容易ではなかったはずです。栗橋~利根川手前に新駅を造ると、栗橋駅との距離がかなり短くなってしまいます(それでも良かったのではと思いましたが、何らかの事情があったのでしょう)。利根川より先は用地がありまくりですが、万が一に利根川橋梁が流出でもしてしまえば車両が動かせなくなってしまいます。おそらくそういう事情があり、現在の南栗橋駅に車庫ができたと考えられます。

 

・なぜ直通を南栗橋で分断したのか?

車庫が他の地域にできなかった事情は説明できました。では何故直通を南栗橋で分断したのか?という話になります。かつては浅草から日光線に直通し新栃木や遠くは東武日光東武宇都宮まで直通する列車がありましたが、浅草口は6両編成までしか対応しておらず拡大が難しかったことや都市圏と郊外の利用率の差、地下鉄直通が計画され日中でも10両編成が首都圏側を走るようになることから合理化の一環で郊外側との直通を分断しようとなった流れは自然でしょう。

でも南栗橋行は入庫の一部に留め主な列車は久喜に流し、日光線東武動物公園で乗り換えさせる方法も無くはなかったはずです。では何故そうしなかったか?その理由はおそらく(図にわざわざ示した)杉戸高野台幸手の存在にあると思います。この2駅、実はかなりの利用があります。朝に下り列車に乗ると、久喜行急行が東武動物公園南栗橋行各停に接続する乗継では急行から一気に乗り換えが行われますし、館林行の続行で南栗橋行が運転される場合でも(乗客の多くが先発の館林行に吸われるにも関わらず)南栗橋行に相当な乗客がいます。帰宅ラッシュでは7両とかに立ち客多数ですし、朝夕だけとはいえ杉戸高野台は特急停車駅。仮に日光や宇都宮からの4両編成を東武動物公園に延ばしたら?おそらく待っているのはラッシュ時間帯の積み残しでしょう。そもそも南栗橋駅ができる前から幸手行があったくらいですから、相当な需要と言えます。

ちなみに全時間帯で見ると急行は久喜行の方が利用が多い印象です。伊勢崎線にせよ日光線にせよ東武動物公園で分断するのは容易ではありません。

 

ということで南栗橋駅が終着駅なのは、車庫を造った都合だけでなく、その手前までの駅の利用も多いからというお話でした。

もう20年近く発着駅をやっておきながら駅前が発展してなかったというのは何とも不思議な話ではありますが、まあ日中ならホーム降りたら目の前に乗り換え列車が来るので本当に乗り換えのためだけの駅でしてわざわざ改札通過する人もあまりいなかったんでしょう。現在は南栗橋駅周辺の開発プロジェクトが進んでおり、マンション等住宅も造られていますから近いうちに駅前ロータリーにはコンビニができるはずです。

もっとも幸手駅杉戸高野台駅東武動物公園以南の方が栄えているのは間違いないので、もしも寝過ごして南栗橋より前の駅で起きられたら、例え終電だとしても南栗橋駅まで行かず迷わず降りた方がいいです。杉戸高野台にはマクドナルド等24時間営業の店もいくつかありますし、幸手ならネカフェがあります。ただ一番のリスク軽減は久喜行きかそもそも押上行に乗ってしまうことでしょうか?

 

そういえば「渋谷から田園都市線に乗ったら寝過ごして中央林間駅まで行ってしまい、そして起こされないまま折り返して渋谷も半蔵門線伊勢崎線も通過して南栗橋駅に来てしまった」という人もいたような……